介護職が行ってはいけない「医療行為」の線引き
介護職による医療事故
介護施設におけるバイタルチェックは看護師のみならず介護職が行うことも珍しくはありませんが、そこで異常が認められた場合の対応については介護職が行ってはいけないものもあります。バイタルチェックに関わるもの以外にも、医療従事者でなければ行うことができない医療行為がありますが、実はこの線引きは今まであまり明確にされてきませんでした。
そんな状況の中で、介護職による医療事故は少なからず発生してきたのです。例えば痰の吸引をする際に喉を傷つけてしまったり、不調を訴える施設利用者に対して介護職が個人的に服用している薬を使用させてしまうなど、取り返しのつかない事態につながる可能性のある事故が実際に起こっています。爪切りひとつをとっても、誤って傷つけてしまわないだろうか、介護職が行っても良い範疇なのだろうか、と不安を抱えながら対応している介護職が多かったのです。こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2017年にやっと「介護職が行うことができる行為」について明確にしました。
介護職が行うことができる行為
医療のプロでなければどれが医療行為なのか、そうでないのかについて完璧に判断することは難しいと思います。そんな中で介護職は高齢者をケアする際に悩み、迷い続ける状況にありましたが、近年厚生労働省は「医療行為ではないもの」10項目を明確化し、介護職が行っても良いものとして発表しました。
例えば「水銀体温計・電子体温計による腋下の体温計測、耳式電子体温計による外耳道での体温測定」や「軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)」、「軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)」や「坐薬挿入」などがこれにあたります。また、「耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く)」や「自己導尿の補助としてのカテーテルの準備、体位の保持」なども同時に認められるようになりました。
万全の体制とは言えない
介護職が行って良い処置の範疇は以前に比べるとわかりやすくなったとは言え、まだ不明瞭な部分や利用者の状況に応じて判断しなければならない部分もあり、全ての問題が解決したとは言えない状況です。
介護の現場で医療事故を起こさないために、また介護職が自身の身を守るためにも、勝手に判断せずに事業所の責任者や医療従事者の判断を仰ぎ、その内容を文章化しておく必要があります。また、責任者や医療従事者側も「行って良いと判断した理由」を明確にしておくことが求められるでしょう。
更新日:2019.12.02
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